新しく静岡大学のメンバーになられた皆さん、ようこそ。附属図書館一同、みなさんを心から歓迎します。きょうは図書館のお話をさせていただく前に、ちょっと別の話しを。
何も拘束するもの(条件)がないよというときに、「勝手にしていいよ」という言い方がありますね。もっと突き放してしまえば、「勝手にしろよ」となりますが。日本の一軒家には、お勝手、あるいは勝手口という玄関とは別の台所へとつながる、あるいは直結する小さめの出入り口がしばしばもうけられています。正式な玄関とは違って、内々の出入り口。私は映画でしか知りませんが、東京では「ご用聞き」がこのお勝手から顔をのぞかせていたのですね。
勝手が入った言葉には、「好き勝手」。これは少し顰蹙を買うような行動への言葉ですが、「好きにしていいよ」と言う言い方もあります。余裕が感じられますね、言う方に。しかしこれらはすべて、制約(縛り)がない、ということを言っています。
ところで、「どうぞご自由に」という言い方もありますが、ちょっと気取っている、と思われるのかあまり使われません。ただそれはちょっと違うかな、と思います。そもそも<自由>という言葉の持つ意味が私たちの日常生活の中にはしっかりと根付いているとは言えないのではないかと私はかねがね思っています。そしてこの<自由>という考え方が、大学という<最後の>教育機関にあっては一番大事ではないかとも思います。
<自由>というのは、制約がない、というだけではもちろんありません。それを求めて西欧では人々の激しい闘争の歴史があった。それは人間の基本的な権利として求められてきたものですが、今の日本の大学にあってもやはり根幹に位置づけられるべきものだと思います。自由に、自由闊達に振る舞うには、やらねばならないことがある。自由に振る舞うためには明文化されていない様々な、それぞれの立場や場面でやらねばならないこと、やってはならないことがあります。それをみなが行うことによって生まれる自由、気持ちのいい空間と時間。自由闊達な雰囲気。それが新しいものを生み出す大学の土壌をも作っていくと思いますし、何より人が育っていく場の基本だと思います。勝手口とは違って、正面玄関から堂々、ですね<自由>は。
では図書館の話。
iPadや(iPad2がでましたね)Kindleの普及からもわかる通り、紙でできた本はどんどんと電子情報に置き換わってきています。みなさんが専門課程に進んで卒業研究に取り組むようになったり、大学院に進むと、特に理工系では英語で書かれた論文を読むことが日常になりますが、世界で発信されている理工系の研究論文のほとんどが電子で配信されるようになりました。静岡大学のメンバーになられたと同時に、図書館の中ばかりではなく、研究室やセミナー室など大学のさまざまな場所で、パソコンから数千の学術雑誌にアクセスすることができます。理工系の最新の研究論文を読むために図書館へわざわざ出かける必要はほとんどなくなりました。人文社会系や、法律のデータベースも量的な大小はありますが、電子情報での配信が増えてきています。
では図書館はもういらないの?
そうではありません。
毎年たくさんの本が紙で出版され続けていますし、何より静岡大学附属図書館には120万冊の本があります。大学のキャンパスの中で、講義室と生協食堂以外に行くところがない? 是非図書館へ来て下さい。
電子情報化の時代の流れの中で、静岡大学附属図書館も大きく変わりつつあります。大学には附属図書館を備えなさい、という法律があって附属図書館は作られたのですが、そのような法律はもうありません。つまり、我が国の大学ではもう図書館はあってもなくてもよい、極端に言えばそのような変化の中で、
静岡大学附属図書館は大きく変わろうとしています。昨年度の始めに静岡館はリニューアルオープンしました。入り口横に静岡大学の学生や教員の交流の場のギャラリー。教育学部の学生さんたちの書道や美術の展示の他、人文学部のゼミによる図書館にある江戸期の本の紹介、理学部の教員による地震研究の紹介など、日頃の活動をお互いが知り合う場に育っています。
入退館ゲートでは
IDカードが必要ですが、これは地震などの緊急時に誰が図書館の中にいるのか、速やかに情報を得る役割もします。その向こうにはカウンター前にゆったりした空間を用意しました。
本のことは気軽に図書館員(ライブラリア)に聞いてください。大学にやってきて、まだ仲間もいないので、すっと下宿にかえる、ではちょっと寂しいではありませんか。PCワークエリアもゆったりとってありますから、ここでなにか探し物でも見つけてライブラリアンに気軽に話しかけてみてください。
携帯は、電話ボックスで!3階には個室ブースを6つ用意しました。卒論や学位論文の作成などに活用してください。空いていれば自習ももちろんOKです。そして5階には閲覧スペースの奥にグループ学習に適したハーベストルームを用意しました。
場にふさわしい範囲内の会話はOK。時にはゼミが開かれていますので、自由に見学したりそっと参加したりしてはどうですか?まずはファミレス気分の椅子で、クラスの人と誘い合ってカリキュラムを広げて情報交換してはいかがですか?
そして、お待たせしました、浜松キャンパスもかわります。改修工事が終わる7月まで、ご迷惑をおかけしますが今少しご辛抱ください。この期間も部分的には使えますので。
さあ、附属図書館を<自由に>使って、あたらしい、あなたらしい静大キャンパススタイルを作って下さい。それらが集まっていけば、<静岡大学図書館>の新しい<文化>が生まれてくるのではないかと期待しています。(地球環境微生物学) (2351)